王道焼肉とは
「お店の業績を上げたい」「新しくお店を出店したい」といったご相談が全国から寄せられます。北海道~沖縄まで全国の焼肉企業に対してコンサルティングをさせて頂いている訳ですが、完全個別対応型のコンサルティングを行っている我々はご提案する企業により提案内容は様々です。企業の強み、商圏状況、規模、時期により適正な提案内容は変わってくるものです。そんな中、今我々が最も強くご提案しているのが「王道焼肉」という本来焼肉業態としてあるべき姿を再認識し、店舗で実戦しようというものです。
では、王道焼肉とはどういうものを指すのか?事業を成長させる為には大きく2つの考え方があります。
1.時流適応
(意味)時間の経過と共に刻々と変化する世の中の流れ(=消費者のニーズ)にビジネスモデルや商品を合わせる事
→流行にのるという考え方。
→写真映え、〇〇放題、サブスク、1人〇〇、WEB・SNS活用等
2.原理原則
(意味)「原理」とは対象部位の根本的な動きや加工、または役割を果たすための理屈。「原則」とは原理を成り立たせるための、対象部位におけるルール。
→不変的に変わらない物事の本質
→シズル感、接客力、調理力、食味、仕入れ、人材教育等
長くコンサルティングをしていると事業成長の為の提案には、大きくこの2つの考え方に基づく手法が挙げられます。大半のコンサルタントは、マーケティングを元に時流適応に関する提案をします。
1つ目の理由は、原理原則の提案を行う為には飲食の原理原則である「現場(商品)」を分かっている必要がありますが、その経験が無い多くのコンサルタントは表面的な時流適応という切り口でしか提案する事ができないからです。
2つ目の理由は、時流適応での提案の方が業績が上がりやすいという事。今、世の中(消費者)の興味のある事を実践する訳ですから当然の結果であります。しかしながら、時流適応はその名の通り、時代の流れと共に移り変わっていくとうい事であり、今流行っているものが3年後流行っている可能性は極めて低いというデメリットがあります。ですので、絶えず時流適応していく事が重要な訳ですが、業態論を議論する際に流行を意識し過ぎた考え方になると短命になる可能性が高くなります。
《流行の焼肉業態》
→レーン焼肉
→1人焼肉
→セルフドリンク焼肉
→精肉併設焼肉
→食べ放題焼肉
→テイクアウト専門店
これらは今焼肉業界で成長している業態であり、多くの焼肉企業、飲食企業が参入しています。今流行っているからすぐに売上が上がる、というのは逆に言うと物事の本質が捉えられず(「売上好調だからいいか・・・」)、業態の陳腐化への危機感を持ちにくいという傾向にあります。時流適応策は比較的誰でも出来るものであり、その為参入障壁が低くすぐに競合過多の状況になります。そういった状況を過去に数多くみているのは私だけでは無いでしょう。出店目的や企業の自力により完全に反対するものではありませんが、多くの中小企業がそれには当てはまらないでしょう。販売促進や商品開発といった手法レベルでの時流適応をお勧めします。
流行業態が増えている今だからこそ原点に返り、原理原則にのっとった「王道焼肉」としての考え方で業態開発や自店の商品見直しを進めていきましょうという提案を我々は進めています。
焼肉業界を時流適応⇔原理原則という切り口で大きく3分類したものがこちらです。
王道焼肉とは、焼肉の歴史、成り立ちを学び、本来どういった業態なのかを理解する事から始まります。全国の数多くの老舗王道焼肉店をみてきた中で共通点が挙げられます。
王道焼肉店の圧倒的な共通点は「食味」に対するこだわりです。美味しいかどうか?飲食店にとって普遍的で本質である美味しさの追求です。当たり前じゃないか、と言われそうですが年間数百件の焼肉店を視察している中でいかに食味にこだわっていない店が多い事か、毎度強く残念に感じる事です。美味しさとは、年代、性別、日頃の食生活、単価による変わるものであり、いちがんに言えるものでは無いものです。コンセプトや客層、客単価により美味しさの定義を変える事も必要でしょう。ただ、それ以前に食味に対しての追求を店主がおこなっているかという事が重要です。では、王道焼肉にみられる美味しさの共通点とは何か?
■タレへのこだわり
→タレ自体へのこだわりとタレが味わえる肉へのこだわり
もみダレとつけダレのバランス
■部位へのこだわり
→部位毎に最適なカットの厚さ、大きさ、隠し包丁の回数、もみダレの種類
■肉へのこだわり
→産地、ランク、納品状況(チルドorチルフロorフローズン、スペック)へのこだわり
■サイドメニューへのこだわり
→スープ、冷麺、キムチ
■ご飯へのこだわり
→品種選び、炊き方、炊き立ての提供
上記だけでも、王道焼肉とそうでない焼肉との差は大きくあります。王道焼肉店はこれらを何よりも最優先に考えます。出来ない理由は無い、という徹底ぶりです。ですので販売促進をしなくても、商品力の高さにリピーターがつき、お客様が絶えない。毎月お伺いするコンサルティング先の経営者は毎回キムチの試食を行う訳は新たな美味しい商品へのチャレンジであり、美味しさへの追求度合いが他店よりも勝っているからなのです。
しかしながら課題もあります。食材をこだわる事で売価は高くなる傾向にあり、職人を必要とし手数が増える調理オペレーションである為、人件費も高騰する傾向にあります。ですので、王道焼肉の多くは、30年前以上の創業で家族経営か、もしくは地方一番企業として資本力を活かしたCKを構えた大箱店であります。
【大事なのは時流適応と原理原則のバランス】
焼肉業界で王道焼肉店の比率は、目算で10~20%といった所でしょうか。低い理由は下記に挙げられます。
<王道焼肉の難しさと対応策>
①職人雇用&教育
→企業側が職人より川上のポジションを取れるか
②人件費高騰傾向
→30坪売上月商1000万の場合、職人2名(月給35~40万)+社員1名
→多店舗化×、月商1000万以上の店づくり、営業時間の拡大、売上チャネル拡大
③店の設定基準の低さ(基準の不明確さ)、安定の難しさ
→頻度高い臨店によりチェック機能強化、社内独立などの新たな展開の仕組みの導入
④商品提供の遅さ(手数の多さ)
→バイトの戦力化、省人化仕組み導入
⑤売価設定が高い
→出店立地もポイントとなる、マーケティング力でカバー
⑥瞬発力が無い
→時流商品を提供しない為固定客が重要、マーケティング力でカバー
→中期的戦略としての位置づけ
このように、実践するのは難しい課題がいくつも挙げられます。しかしながら、難しいからこそ参入障壁が低く、競合が生まれにくく業態寿命が長くなるのです。
業態づくり、商品づくりの視点では、この王道焼肉としての考え方を導入される事をお勧めします。そして、販売促進や季節メニューやフェアメニューにおいては時流適応の考え方で行い、原理原則7:時流適応3のバランスが一番好ましいと言えるでしょう。
食味が低いからボリューム訴求に頼る、食味が低いから見た目訴求に頼る。。。といった考え方では無く、まずは原理原則にのっとった商品の見直しをおこない、その上で攻めのマーケティング活用を実践される事をお勧め致します。
集客ができないこのコロナ禍で我々のクライアントは、徹底的に商品の見直しを行っています。今の時期を既存店の強化に動いている企業は必ずコロナ明けに今まで以上のチカラを発揮する事でしょう。