焼肉店を開業する為にやるべき10の事

目次
1.まず初めに
2.今ある資産(強み)と目的を明確にした業態選び
3.初期投資の試算
4.物件調達
5.焼肉店開業に必要な資格
6.コンセプト設計
7.メニュー設計
8.採用活動
9.備品購入
10.各種ツール作成
11.オープンスケジュール作成

【1.まず初めに】

 皆さんにお聞きします。なぜ、数多くある飲食業態の中から焼肉店を選ばれたのでしょうか??
「技術が無くても簡単に出来そう」
「お客さんが焼いてくれるから人件費を抑えられそう」
多くの方の答えがこうゆうものでは無いでしょうか。

確かに、他業態に比べると比較的オープンしやすい業態ではありますが、重要なのはしっかり継続的に利益が残せるかどうかである事は言うまでもありません。逆に言うとそういった思い込みで新規出店が相次ぐ焼肉業態だからこそ競合状況は厳しいものであり、出店閉店サイクルが早いとも言えるでしょう。
上記のような安易な動機で焼肉店をオープンされても繁盛店にはなれない事は言うまでもありません。

「焼肉店だと簡単に儲かりそう」という発想自体を無くしましょう。
全国には3万軒を超える焼肉店が存在しており、その中でいかに他店との差別化を図り、繁盛する焼肉店をつくれるかをこの記事でお伝えします!

【2.今ある資産(強み)と目的を明確にした業態選び】

 まず、焼肉店開業に向けてやるべき事はどんな焼肉店をつくりたいか?
一言で焼肉店といっても客単価や肉の種類、スタイルにより大きな違いがあり、焼肉店を細かな業態毎に考える必要があります。どんな焼肉業態で開業するかを考える際に重要なのは、どういう目的で開業したいのか?そして、今ある資産は何なのか?どのような強みを持ち合わせているのかを、整理する事が重要でしょう。

図1

上記のように、開業の目的や今もっている強みにより適正な焼肉業態は変わってきます。まずは、それらを整理した上で適正物件(商圏人口、坪数、立地条件)を探す事が大切になってきます。

【3.初期投資の試算】

開業する焼肉業態が決まると、適正な立地や坪数、必要調理機材が把握出来る事になり出店にかかるコスト算出が可能になります。
例として下記に30坪路面店舗の場合いくらぐらいのコストがかかるのかを一覧にします。

<条件>
・路面物件
・30坪12卓51席
 →席数算出目安:坪数×1.7席 ※居酒屋の場合は2席で換算
 →卓数算出目安:席数÷4席
・家賃45万(坪1.5万円)
・売上目標月商600万円、原価率F35%、人件費率L25%(社員給与60万円)

項目 コスト
物件取得費用 保証金(6か月分) 270万円
礼金(2か月分) 90万円
仲介手数料(1か月分) 45万円
オープンまでの空家賃(2か月分) 90万円
内外装工事費用 飲食店設備(坪60~75万円) 1800~2250万円
焼肉店設備(上引きダクト+焼き台) 192万円
厨房設備費用 飲食店設備 400万円
焼肉店設備(スライサー) 30万円
レジ費用 初期費用 50万円
備品費用 厨房備品、その他 30万円
焼き台ロストル 6000円×100枚(外注洗浄の場合) 60万円
食器 50万円
制服 店舗刺繍入り 10万円
採用費&販促費 採用媒体、チラシ作成 30万円
合計 3147万円
運転資金 180万円
家賃45万×3か月分 135万円
水光熱費(売上対比3%)18万×3か月分 54万円
各種リース・媒体費10万円×3か月分 30万円
返済25万円×3か月 75万円
合計 474万円

※ダクトには天井からダクトを吊るし煙を吸う「上引き」と、専用テーブルで下から煙を吸う「下引き」というスタイルがあります。ダクトを通す為の床上げや専用テーブルにかかる費用を加味すると上引きスタイルの方がコストは抑えられます。シミュレーションでは上引きでの施工費用となります。

①物件取得費用(約270万円)
■保証金・礼金
物件により保証金、礼金の費用は変動があります。平均、保証金6か月、礼金2か月程度が基準にはなりますが、人気物件や商圏人口の多い繁華街、商業施設などは保証金10か月~12か月といった事も考えられます。想定していない方が多い費用ですので、しっかり不動産屋さんに確認する事が必要でしょう。
■フリーレント(家賃無料)
家主によっては「フリーレント」という制度をとってくれる案件があります。「工事期間中は店側も売上(利益)が無い為、その期間考慮してあげよう」というものです。一般的に、30坪のお店をオープンさせる場合(スケルトン物件の場合)、契約してから図面やパースをおこし、着工~引き渡しまで約1.5か月~2か月かかります。家主により無料期間は変わりますが、一般的には工事期間中は無料にしてくれる事が多いでしょう。また、このフリーレントは大半の家主が対応してくれるものですので、しっかり不動産屋さんを通して交渉する事も重要となります。

②内外装工事(約2,000万)
物件の中が空っぽの状態であるスケルトン引き渡しの場合の工事費用目安です。一般的に焼肉店は施工費用が多くかかる傾向にはなり、ダクト工事、焼き台購入で居酒屋などの業態に比べて約200万程高くなるでしょう。内外装工事の一般的な目安は1坪あたり60~75万と考える事がベターでしょう。大衆的な店づくりになれば当然、これよりも下げる事も可能です。

③厨房設備費用(約430万)
焼肉業態で特別必要なコストアップとなる厨房設備はスライサー(約30万)ぐらいでしょう。その他、肉の保存を長くする為の真空機なども必要に応じて導入を考えましょう。

④レジ費用(約50万)
昔はレジ導入に200~300万のコストがかかってましたが、近年ではローコスト導入が可能なレジも出てきており、最近のお店はこういったレジを導入している傾向が高まっています。
EX)Uレジ、ユビレジなど

⑤備品費用
※下部の開業時に必要な備品一覧参照

⑥焼き台ロストル(約60万)
焼肉開業で必要となる意外なコストがこのロストル(網)費用です。どのような焼き台にするかによりコストは大きく変わります。
<使い捨て網>形状により変動はありますが、大体1枚100円以下で購入可能です。
<ロストル>使用後、洗浄し使いまわすタイプのものです。
→自社で手洗いする:人件費がかかり、省人化が進む現代では敬遠されがちです。
→自社の機械で洗浄する:大型店舗では1台200~300万程する洗浄機を導入しているお店もあります。
→外注で洗浄してもらう:1枚80~100円で外注洗浄してくれます。ただ、外注できる業者が減ってきている為、業者捜しが一つの懸念事項でしょう。

今回は30坪でのシミュレーションですので、外注洗浄が好ましいでしょう。外注洗浄の場合、「今日使うロストル」「洗浄中のロストル」「配送中ロストル」の3つを加味する必要があります。
例)12卓の場合・・・12卓×ロストル替え平均1.5回=18枚×平均2回転=36枚
36枚×3=約100枚程度
一枚6000円で計算すると約60万程度となり、一般的な飲食業態にはかからないプラスアルファの大きなコストとなります。

⑦食器(約50万)
※下部の開業時に必要な備品一覧参照
名入れをするか?新品か?により食器の費用は大きく変わります。最近では、テンポスバスターズのような中古に特化した厨房機器屋もあるので、こういった所で中古(1枚200~400円)の食器を探す事もお勧め致します。

⑧制服(約10万)
こちらも食器同様、名入れをするかどうか、厨房とホールで制服を分けるかにより変動しますが、一般的な費用としては約10万程度を考慮しておく方が良いでしょう。コストを抑えたい場合は、ビールメーカーの協賛品もありますので相談してみるのも良いでしょう。

⑨運転資金(約500万)
運転資金の考え方は、経営者や企業により様々ですが30坪程度の物件を開業する場合には、最低500万程度の資金をオープン時に用意しておく事が好ましいでしょう。

【4.物件調達】

上記の述べたように目的によりやりたい業態を考え、その上で戦略的にどのような客層をターゲットにするか?どのような単価設定にするか?が重要となります。また、エリア内にどのような競合店が存在するのか?も視ておく必要があるでしょう。

<適正エリア選びにを視る為の商圏データ>
 ▶乗降客数:最寄り駅の乗り・降り人口
 ▶定住人口(夜間人口):エリアに住んでいる人口
 ▶昼間人口
  →就業人口:エリアに働きに来る人口
  →商業人口:エリアに買い物に来る人口
 ▶競合店舗数
  →1店舗当たりの競合店舗数:単純に競合数だけではなく、商圏人口に対しての今日店舗数を視る
 ▶所得指数
  →全国平均に比べて住んでいる人の所得の傾向
 これらを事前に戦略立てしておく事でまずは、どのようなエリアが出店に適しているかを考えましょう。

<物件情報収集>
適正エリアをいくつかピックアップした後にエリア内物件を探します。物件情報は下記のように多岐に渡る企業から紹介してもらえます。
◎町の不動産
◎飲食専門不動産
◎酒屋
◎ビールメーカー
◎厨房機器
◎広告媒体企業
上記に加え、直接自分の足でエリアを探索する事も大事でしょう。地元の不動産しか扱っていないような空き物件もありますので、外観に掲示してある不動産屋さんに連絡してみるのも良いでしょう。

<適正物件の選び方>
上記に述べた手順でどのような焼肉業態にするかを考えた結果で適正な物件は変わってきます。一等地は当然家賃が高くなり、損益分岐も高くなります。敢えて二等立地~三等立地を狙い低家賃で損益分岐を下げるという戦略もあります。競合店舗数の少なさも追い風になります。単純に人通りや商圏人口の多さだけで選べば良いという事ではありません。あくまで業態に合った適正物件を選ぶ事をお勧めします。
どのようなポイントを視て物件を判断すれば良いのかを視ていきましょう。

▶階数
 傾向としては、路面から階数が上がるにつれて設定客単価が高くなります。客単価が高い程、目的来店性が高まります。大衆業態であれば路面、高級業態であれば空中階が好ましいでしょう。

▶家賃
適正な家賃比率は売上比6~7%(上限10%)で考えます。目標売上から逆算し、家賃が適正なのかどうか?目標売上が見込めるかどうか?を視る必要があります。

▶居抜きorスケルトン
 当然一番コストを抑えられるのは焼肉の居抜き物件でしょう。内外装や厨房機器をそのまま譲り受けるというものです。スケルトンにするのも数百万の費用がかかる為、前オーナーがそのまま置いていくというパターンがあります。ただこの場合、前オーナーに対して造作代(譲渡金)が数百万かかります。

▶重飲食の可否
 飲食店は大きく軽飲食と重飲食に分けられます。煙やにおいが大量に出て大掛かりな排気排煙設備が必要となる焼肉業態は重飲食に振り分けられます。「重飲食不可」という物件もあるので気を付けましょう。

▶電気容量
 一般的な飲食業態よりも吸排気設備に多くの電気を使う事になります。また、各テーブルで火を使う為、エアコンの能力も高くする必要があります。物件全体の電気容量を把握した上で吸排気設備、空調設備に使う電力が足りるかどうかも確認を取りましょう。

▶敷金、礼金、フリーレント
 先にも述べましたが、家賃以外にかかってくる敷金、礼金の確認しましょう。また家賃無料の期間も契約前にしっかり交渉するようにしましょう。

▶契約期間
 定期借地契約の場合、年数が設定されています。その年数が経過すると撤退しなければならないという物件もあります。

【5.焼肉店開業に必要な資格】

焼肉店を開業するに当たって必要な資格は下記2つとなります。

①食品衛生責任者

食品を取り扱う店舗では必ず各施設1名の配置が義務づけられています。開業の際に、出店エリアの管轄保健所に食品衛生責任者の届出が必要となります。1日の講習で取得する事が出来ます。(費用は1万円程度)調理師や栄養士資格を取得している際は不要です。工事の引き渡し終了後、保健所スタッフ立ち合いの元、図面と照らし、決められた設備や基準を満たしているかどうかチェックが入ります。管轄の保健所に事前に相談にいくようにしましょう。

②防火管理者

収容人数30名以上の店舗の場合、必要となる資格です。管轄消防署で講習を受ける事ができます。通常1日程度で費用7,000~8,000円で受講する事ができます。こちらも、物件引き渡し後、管轄の消防所スタッフの立ち合いチェックが入ります。事前に図面を見てもらい、基準を満たすものかどうか確認する事が好ましいでしょう。こちらも事前に管轄の消防所に相談するようにしましょう。

③深夜酒類提供飲食店開始届

こちらは深夜0時以降にお酒を提供する際に必要となる届出となります。客に接待行為を行う際には「風俗営業許可書」も必要となります。

④食肉販売業許可申請

近年、増えている焼肉と精肉小売の併設業態の場合、上記の申請に追加で必要となる申請が食肉販売許可書です。生肉(精肉)を販売する際に必要となり申請であり、厨房設備の基準などが飲食業よりも厳しくなります。

 

※「生食用食肉取扱認定」店舗基準

  2011年春に起こった「ユッケ集団食中毒事件」により、生食用食肉の取り扱いが厳しくなりました。 正肉⇒枝肉を分割し、骨や余計な脂肪を取り外したものを言います。

部位)バラ、ロース、うで、もも等

これらは全ての部位が生肉での提供を禁止されています。

内臓⇒一般的には肋骨内に収まる部位の事を言いますが、ハラミ(横隔膜)、タン(舌)、ツラミ(ほほ肉)なども内臓として取り扱われます。内臓で生食提供が禁止されている部位はレバー(肝臓)のみとなります。

つまり、タンやハラミ、ツラミは原則生食提供する事ができるのです。生食用食肉取扱認定店とは、定められた設備、調理手順、保存、有資格者の有無等の厳格な基準を満たしたお店にのみ与えられる認定ですが、現実的な経費やスペース、資格取得の難易度を考えると認定を取得している焼肉店は全国でも数える程度に限られます。

大半の焼肉店開業者が必要となるのは、「食品衛生責任者」「防火管理者」となります。設計図面や開業スケジュールにも関わってきますので、店舗デザイナーや施工会社としっかり連携を取りながら不備が無いように進めましょう。

【6.コンセプト設計】

どのような焼肉業態にしたいか?開業する上で最も重要なのがこのコンセプト設計です。一言で焼肉と言っても、取り扱い牛肉のランク、部位、正肉メインor内臓メイン、形態、単価、立地により多くの業態に細分化されます。コンセプト設計を考える際に、「5W2H」というフレームワークを使いながらコンセプトを組み立てていく事も重要です。

  • When(いつ?)→出店スケジュール、時流
  • Where(どこで?)→出店エリア
  • Who(誰が?誰に?)→ターゲット
  • What(何を?)→商品
  • Why(なぜ?)→出店目的
  • How(どうやって?)→商品開発、販売促進
  • How much(いくらで?)→価格帯

 この5W2Hを考える事で、必然的にコンセプトが定まっていきます。では実際にどのような思考で5W2Hを考えていけば良いのかを考えていきたいと思います。

①開業の目的

最も重要なのが焼肉開業の目的です。「何の為に出店するのか?」を考える必要があります。具体的な数値目標もあるとより適した業態を考える事ができるでしょう。

例えば・・・

  • 脱サラなどでやりがいを求めた生業としての出店=収益はサラリーマン給与+α
  • 多店舗化したい=初期投資の低さ、収益率、オペレーション標準化

 

と言ったかたちで、目的により適正な業態は変わってくるでしょう。

②内部環境の強み

コンセプトを考える際に、元々ある自社の強みを活かすという事も非常に重要となります。他社と比べ、現状何が優位に立てるのか?それらを核においてコンセプトを考える事で、差別化要素の強いコンセプト設計が可能となります。

 例えば・・・

  • 本業による資金が潤沢にある=初期投資を高くする、大箱物件、繁華街物件
  • 物件が取得しやすい=商業施設、居抜き物件、商圏人口多い物件
  • 肉の仕入れが安い=コスパの高い業態、低価格業態

 

まずは、上記2点を最初に整理する事が大事でしょう。その上で、立地はどうするのか?メインとなる焼肉メニューはどうするのか?客単価はどうするのか?をメリット・デメリットを加味しながら組み立てていく事が重要となります。


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近年では、「ひとり焼肉」「レーン焼肉」「食べ放題焼肉」「セルフ飲み放題焼肉」「会員制焼肉」といった、時代背景を反映した焼肉業態も出店が相次いでいます。それぞれのメリット・デメリットを考えながらコンセプトを考えましょう。

【7.メニュー設計】

 

コンセプトが決まると、次に考える項目がメニューとなります。テーマ毎の考え方をみていきましょう。

①客単価

最も重要なのが、メインとなる焼肉メニューにどのような部位、ランクの牛肉を使用するのかとなります。その中でも、最も出数の多い、そしてお店の顔となるカルビ材に何を使用するのかで全体の客単価に大きく影響してきます。

▶カルビ材別単価算出方法

<カルビ材別原価計算>

  • アメリカ産ショートプレート 1200円/k→歩留まり80%=1500円/k
  • アメリカ産プレートフィンガー 1700円/k→歩留まり85%=2000円/k
  • 国産交雑牛 バラ 1700円/k歩留まり45%=4000円/k
  • A5ランク バラ 2200円/k→歩留まり45%=4888円/k

<一人前原価5枚80g設定> ※タレ原価無で考えた場合

  • アメリカ産ショートプレート→原価120円/80g=売価相場490円(F24.5%)
  • アメリカ産プレートフィンガー→原価160円/80g=売価相場590円(F27.1%)
  • 国産交雑牛 バラ→原価320円/80g=売価相場690円(F46.4%)
  • A5ランク バラ→原価391円/80g=売価相場790円(F49.5%)

 

<カルビランク別適正客単価>

  • カルビ価格490円~590円→客単価4000円以下
  • カルビ価格690円~790円→客単価4000円~6000円

▶一人前ポーション

戦後、日本に根付いた焼肉業態ですが、仕入れ価格の高騰、人件費の高騰により一人前ポーションが少なくなっている傾向があります。元々は一人前100~130g設定のお店(老舗焼肉)が大半でしたが、今では多くの焼肉店が80g5枚カットでの提供が主流となっています。更に繁華街型立地やひとり焼肉のような業態では70g4枚カットでの提供を行い、見た目の価格を安く見せ、敷居を下げて入店を促すようなお店も増えてきています。

【補足】

※歩留まりとは?

・・・各部位の塊肉からスジ・脂等を綺麗にそぎ落とし、正味使える肉の%を表した数値。そぎ落す部分が多い程、歩留まりが低くなり、原価は高くなる。焼肉業態においてはこの「歩留まり」が与える影響が非常に大きく、店舗によりどこまで脂をつけるかどうか?歩留まりの高い肉を仕入れられるかどうか?が非常に重要となる。

※肉の保存状態

  • 〇冷蔵・・・生の状態で真空されたもの。鮮度が高くドリップが出ない為、高品質な商品提供に適している。仕入れ価格は若干高くなる傾向。
  • 〇チルフロ・・・生の状態で真空されたものを、精肉卸企業で冷凍にかけた状態のもの。肉材を多く仕入れた業者が、ある一定の鮮度期限を保つ為に冷凍したものであり、冷蔵よりは若干値が下がる。
  • 〇冷凍・・・主に海外肉がこれに当たる。現地で冷凍にしたものを輸入しており、冷凍期間が長く、品質が下がる。ドリップも出やすくなる為、水分が抜け歩留まりが悪くなる傾向。仕入れ値は最も安い。

②原価率

焼肉業態におけるカルビ・ロース・ハラミ・タン・ホルモンの売上は全体の60~70%を占めます。つまり、このカテゴリー原価をどのように設定するか?どのカテゴリーを強化して販売するか?で全体の原価率に大きく影響してきます。業界の相場を考えた際、それぞれのカテゴリー原価には特徴がみられます。

  • カルビカテゴリー(バラ)・・・F40~50%
  • ロースカテゴリー(肩ロース、リブ、サーロイン)・・・F45~55%
  • ハラミカテゴリー(横隔膜)・・・F30~40%
  • タンカテゴリー(舌)・・・F30~40%
  • ホルモンカテゴリー・・・F25%

目標とする原価率を達成する為に、上記のカテゴリー商品の比率をどうするか?を考えます。近年では、ロース材を使用しない焼肉店やバラ材を使用せずハラミ・タンを強化した業態なども出現しています。

③タレ

焼肉業態における差別化においてタレは外せません。タレは大きく肉に揉みこむモミダレとお客様に小皿で提供するつけダレがあります。昔は、大半の焼肉店が自社の手作りで仕込んでいたタレですが、近年では労働環境改善や人件費削減の為に外部のタレ卸から仕入れている焼肉店が増えてきています。自社で仕込む人件費を考えると外注品で多少仕入れが発生しても収益的には問題ないでしょう。品質も向上しており、全国には多くの仕入れ先が存在していますので、ネットなどで検索し、様々なタレを試食する事をおススメします。

④サイドメニュー

近年では、卸企業が無料でサイドメニューのレシピを教えてくれるようなサイトも存在します。知識ゼロからでも作れるような研修制度があるものもありますので、積極的に活用する事をおススメします。

(参考サイト)https://yakiniku-shiire.com/

一般的には、肉をカットして出すだけというイメージで「焼肉業態=商品開発が簡単」という安直な考えで開業されるケースもありますが、多くのケースで失敗されます。当然、焼肉業界の中で他店との比較があり、一つ一つの商品開発に注力する必要があります。深く追及すればするほど、焼肉の奥行を感じる事になるでしょう。

【8.採用活動】

 現在、飲食店開業に当たり最もオーナーを悩ませているのが人の確保です。
有効求人倍率は上昇傾向であり、またコロナによる外食離れ(営業自粛による経営不安定さを危惧したスタッフが飲食以外の業種へ流れている)なども重なり、より一層飲食店での人材確保が難しくなっています。オープン日から逆算し、早め早めの採用活動を行う事が好ましいでしょう。

①売上予測からの必要人員数算出

▶坪数からの売上予測
開業予定の物件坪数から、席数、出店エリア特性や競合状況より売上予測を行います。
一般的には、月坪売上20万が飲食店の繁盛基準とされています。
 20坪×月坪売上20万=月商400万
 30坪×月坪売上20万=月商600万
まずは、月坪売上20万を目標売上にしてみるといいでしょう。

▶目標売上からシフト作成
設定した目標売上、営業時間(ランチ、深夜営業の有無)より、各ポジションに必要な人員を時間別に配置したシフトシミュレーションを算出します。
例)月商600万、営業時間11:00~15:00、17:00~22:00の場合
シフトシミュレーション表 ダウンロード(Excel)

これを元に必要在籍人数を割り出します。

【月間数値シミュレーション】
月商600万
人件費171万
人時売上高4556円
シフトイン→社員2名、PA平日3名、週末5名
必要人員→社員3名、PA必要在籍人15名(採用人数20名)

PAに関しては採用後、連絡が取れなくなったり、退職したりという事があります。元々必要としていた人数よりも、2~3割多めに採用する事が好ましいでしょう。

②採用媒体

▶ハローワーク
 地域のハローワークを訪ねてみましょう。行政主導の就職支援サポート施設なので、一定の労働時間や雇用条件をクリアする必要がありますが、気軽に相談する事をお勧めします。様々な相談に乗ってくれます。

▶有料求人サイト
 飲食業界にはタウンワーク、バイトル、マイナビといった様々は求人サイトがあります。昔のように紙媒体での広告よりも携帯での検索でバイトを探す人たちが大半です。どの媒体が採用しやすいかどうかはエリアによっても大きく変わってきます。一番分かりやすいのは携帯で「エリア 求人」と検索した場合、一番上にどの媒体が表示されるかで判断される事も大事でしょう。

▶求人検索エンジン「indeed(インディード)」
近年、利用飲食店舗数が急増しているのがこのindeedです。上記求人サイトは、それぞれのサイトに個別で検索する必要がありましたが、indeedはWEB上に公開されている求人サイトの求人情報を一括で検索してくれる為、求職者に対して多くの求人を提示する事が可能になり、求職者にとってより便利なものとして多くの方が閲覧されています。詳しくは、地域に存在するindeed代理店などに相談してみると良いでしょう。

▶施工中の店舗でのポスター
アナログなやり方ですが、地方などでは以外と効果がある手法です。立地特性に合わせてタペストリーやのぼりなども活用してみるといいでしょう。

▶人材紹介会社
一般的な求人広告とは違い、成果報酬型の人材紹介という形での採用手法です。社員採用の際に活用する事がありますが、費用は高くなります。紹介会社により大きく異なりますが、社員一人採用につき30~50万といったものや、年収の30%(年収400万の場合120万)といったものもあります。コストが高くなる為、一般社員の採用よりも、スキルのある責任者として採用する場合に活用する企業が多い傾向にあります。

多くの飲食店経営者が頭を悩ませる人の確保。計画的に早め早めの採用活動される事を推奨いたします。

【9.備品購入】

焼肉店開業に当たり必要な備品一覧です。
一般的な飲食店で必要とされる備品に、追加で必要となる焼肉業態特有の備品も多くあります。

必要備品一覧 ダウンロード(Excel)